『営業は3年でやめなさい!』甲斐輝彦著
営業は3年で成長曲線が水平になる。つまり「並みの営業」になるなら、3年頑張ればなれるし、3年目には、(1)その商品に飽きる、または(2)ターゲット(顧客)に飽きるか、ターゲットと話が合わなくなる。
言い換えれば営業の仕事は「陳腐化しやすい」。
なぜなら3年前の新人と中堅の間に差がつきにくいから。
と、著者は書いています。
私は、それが本当かどうかは分かりません。営業職についたことがないから。
けれど、営業に「過去の実績」や「経験」は関係なく、毎月、毎月、新たに張り出される「ノルマ」をクリアーするかしないかだけで評価される営業職は、常に「今」を評価され、「今」しかない点で、会社からしたら簡単に取り替えられる部品のように思われるのかもしれないと思います。
ただ、どんな職業であっても、向上し続けなくてはそれはイコール停滞ではなく、ズルズルとだらしのない後退になるものだと思う。営業職の場合、その新陳代謝が特に早いのではないだろうか?それがつまり陳腐化しやすいということなのかな?
どんな職業でも油断すれば陳腐化する、だから営業職ほど陳腐化しない職業についていたとしても、この本は間違いなく参考になる、ためになる本だと思います。
それにこれから社会に出る中高生や大学生にも読んで欲しい本です。
なぜなら、この本は「ちゃんとした人間」になる方法について具体的に書いている本だからです。
この本の面白いところは、営業職の「成長双六」が書かれているところ。
具体的に見ていきましょう。
レベル1 警戒されるレベル ⇒うさんくさい人じゃなくなる技術
レベル2 警戒されないレベル ⇒「話は聞いてみよう」と思わせる技術
レベル3 名前を覚えてもらえるレベル ⇒顔見知りになる技術
レベル4 また会いたいと思ってもらえるレベル ⇒相手の立場に立つ技術
レベル5 相談されるレベル ⇒信用される技術
レベル6 独立できるレベル ⇒信頼関係を作る技術
レベル7 成功できるレベル ⇒大物になる技術
レベル8 先生と言われるレベル ⇒「この人について行きたい」と思わせる技術
レベル9 名前が残るレベル ⇒天才と言われる技術
レベル10 カリスマになるレベル ⇒伝説になる技術
この一つ一つについて、各章にわけて説明があり、そうなるために何をクリアしなくてはならないか、詳しく説明してくれています。
私は正直、この本を二十年前に読みたかった。
観念的な本より、下世話なくらいハッキリずばずば書いてくれてるほうが、私みたいな頭単純な人間には分かるので。
このレベル1は、<話をしたり、聞いてもらうことが苦じゃない>ならOKなのですが、逆にこれが苦痛に感じるコミュ障の人だったら。。。つまり私のようなタイプだったら、どういう評価が下るかと言うと、「うさんくさい人」に区分けされ、「営業職は辞め」たほうがいいとハッキリ書かれています。
ここまで言い切られて、私はすっきり、なんだか嬉しかったです。
コミュニケーションが苦手で、楽しめない性格なのだから、営業は合ってないんだと言い切られたなら、こ言葉で売り込むのはさっさと諦めて、黙って治療に専念すればいいわけなので。
私の鍼灸の師匠も「鍼灸師はしゃべるな」と言います。(師匠はコミュニケーションが上手なひとですが)
しゃべったらうさんくさくなるのなら、しゃべるのを最小限にすればいいからです。
これを読んで、おかげで楽になりました。
口下手を補うためにホームページに色々書かなきゃと思い込んでいましたが、ばっさり削って、営業時間、新着情報と治療メニュー、アクセス方法だけにしたら、ホームページはスッキリして見やすく、軽く。
売り込もうなんて、そもそも出来ないんだから、やらなきゃいいんだーと営業になることを諦めることができました。
これからは営業する部分に力はなるべく入れません。
営業の本を読んで、営業しない決断ができました。
それもこれも、この本が営業としての成長は、すべからく人間としての成長だと言い切って書いてくれているからです。
この本には、営業の成長が10段階で設定してありますが、これはそもそも禅の「十牛図」から取っているのだそうです。
「十牛図」というのは、どうやって仏として成道するかを、牛飼いが、牛を見失い、それを探す行程に置き換えて、分かりやすく伝えるというものですが、この本も読み進めていけば、営業として成長することが、人間としての成長と同じことなのだということを分かりやすく教えてくれています。
面白い本ですので、ぜひ一度お手にとって読んでいただければと思います。
(おわり)
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