疲労ビジネス

先日から書いていた「疲労のものさし」の続き。

これも梶本先生の講義から。

 

梶本先生が「疲労」という市場をターゲットにしたとき、「疲労」についての専門家は「痛み」などに比べると本当に何分の一かで、ここで「ものさし」を提供するポジションを取れば、必ずこの業界全体を握れる!と直観したらしい。

 

そこから自分の会社を作ったわけではない。

 

もともと会社は経営していた。

最初は本業の医者の傍らやっていた医療統計のアルバイト。

 

節税のために税理士に勧められて有限会社を作ったのが最初。

それから何年かは「会社」とは名ばかりで、完全に個人の節税目的だから、組織と言うほどのものもなく。

 

しかし着想から「疲労」という市場を握るまでの行動力、戦略性、いずれもすごい。

 

まず老年人口の伸びと、保険薬の伸びを比較したグラフを見て、老年人口は倍倍ゲームで伸びていくのに、保険薬は近年抑制されて微増微減。横ばいを続けている。

 

これは誰もが知ってのとおりだが、梶本先生は「では、このギャップを何が埋めるのだろうか?」という問いを立てた。

 

そこに独自の仮説があって、

 

老化、痛み、疲労、そういったものは、人間だけじゃなく、ライオンでもシマウマでも、動物だったらみんな嫌うもの。これらは絶対に消えない。ずっとニーズがある。

 

だけど、たとえばライザップ。

今は成長著しいが、人間の本能にダイエットしたいというのはない。だからダイエット業界はいずれは消える!

 

こういう仮説を立てた。

 

老い、痛み、疲労・・・

 

老いは美容業界が前々からアンチエイジングと言って研究が盛ん。

 

痛みも、もちろん同様。

 

だけど疲労について研究しているコアメンバーはまだまだ全然少ない!

 

医者らしい・・・業界通ならではの視点で、「疲労」という市場にまず目をつけた。この着眼点、すごく面白い。

 

一方「バイオマーカー」(生物ものさし)という新たな武器がある。

ものさしを握れば、業界を握れる。

ドクター梶本はまたそうも考えた。

 

 

そこで何をやったか。

これは大学人ならではの発想。これまた面白い。

 

産学官連携が十年位前からか、流行っている。それを使ってイニシアチブを握れるんちゃうか、と。

 

ドクター梶本の会社は、まぁ大手医薬品起業に対して全然規模の資金力も小さい。

 

良いアイデアを持ったベンチャー企業が大手企業と組んでも、特許だのなんだのは、資金を提供した大手に持っていかれる。

 

大手と一対一で提携しても、ベンチャーには利益が薄い。

だから、いきなり十八社に話を持ち込んだ。

 

「こういうアイデアがあります。研究資金を毎年9000万、3年間出して下さい。おたく以外に17社が資金提供してくれることになっています」

「あなたの会社のメリットは、わが社がこの研究から得た成果を即座に知ることができることです。もし資金提供しなかった場合、御社がこれについて情報を得ることができるのは3年後です」

 

他のライバル17社に遅れたくなかったら、9000万を3年間出し続けるしかない。

パテントも、なんにも手に入らないけども。

 

情報料 2億7000万(かける18社・・・おっふ)

 

この産官学連携プロジェクトが始動して、梶本教授の会社は370億円という超高値をつけたそうだ。

 

名づけて「この指とまれ方式」

 

ベンチャーが大手と対等にやれるのは、ドクターが企業経営者兼「大学教授」のポジションを持っていたことも大きい。

 

その辺もドクター梶本は意識的で、「医者は開業医の地位が一番低い。それに対して大学の教授とかだとそこそこ影響力がある」。だから収入と言う意味では別に必要ないけど、教授というポジションを維持しているらしい。

 

医者という地位、教授と言う地位、経営者としての才能、、もちろん間違いなく恵まれた人だし、才能も豊か。さらには人脈力まであるみたいだけれど、アイデアをマネタイズするのには、大変な苦労もあったはずだ。

 

一切そういう苦労話みたいなトークは出てこなかったが、この疲労市場開拓の話以外にもう一つ事業の話をしていて、単に運が良いとか、才能があるとかではなく、ビジネスをする上でもっと根本的に大切なものがあり、それを持っている人だということがそのエピソードから分かる。

 

長くなってきたのでまた次回。

 

 

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