多様な治療

ある人から、自分は読む暇がないので、と本を借りた。

わたしはどうも本好きということになっているらしく、「かわりに読んで、あらすじを教えて」と言うご依頼を頻繁にいただく。

おかしい。

わたしは鍼灸師であって、本を読む仕事ではないはず・・・・なのだけれど、まぁヒマな鍼灸師なのは確かなのだし、人が勧めてくれた本は一度は目を通すほうなので、借りた本は喜んで読ませていただく。(借りたというか、押し付けられたというか・・・)

ただいま押し付けられている本は二冊。

一冊は「一方の花 五代目上村吉弥の生涯」というタイトルで、歌舞伎の先代上村吉弥さんのことを書いた本。

これは、その鍼灸院の先生が歌舞伎や文楽がお好きな方で、今度六代目の舞台を観に連れて行くから、読んどけという話。

もう一冊はちょっといきさつが変わっている。

私の鍼灸のおっしょさん(研修先とはまた別)が、患者さんから押し付けられた本らしい。

タイトルは、なぜ関空に世界中からがん患者が集まるのか?

日本ではあまり知られていないが、世界の富裕層が競うようにして集まってくるがん専門のクリニックが、この大阪にあるらしい。

そのクリニックの治療法が、題して「動脈塞栓術」。

がんは正常細胞より大食いだということは知られている。

なので、がんに西洋医学の治療法を使い尽くして治らなかった患者さんが、断食したりすることもある。

がんを兵糧攻めにするという考え方だ。

動脈塞栓術では、がんに栄養を送っている動脈を人工的にふさぐ。

そうやって孤立させたがんに、カテーテルで抗がん剤をピンポイントに送り込んで、飢えで小さくなったがんに止めを刺すというものだ。

・部分的にしか抗がん剤を使わないから、金銭的な負担も小さい。

・全身に抗がん剤を使わないということは、抗がん剤の副作用も小さいということにもなる。

・大掛かりな手術ではなく、マイクロカテーテルというものを使うので、そもそも弱った患者さんの体への負担小さくなる。

そういうことですばらしい治療法なのだが、日本では知名度がまだまだ低い。

なんでか海外では有名で、学会も開かれている。

ではなぜ、こんな本を、うちの師匠が患者さんからもらったか。(本、嫌いなのに)

実は師匠の針灸院には、すごくがん患者さんが多いのだ。

聞いて驚け。

なんと、患者さんの4割ががん患者さんだ。

別にがん専門の針灸院ではないし、がんが治ると吹聴しているわけでもない。

がん患者さんが最初から多かったわけでもない。

師匠の治療が、抗がん剤の副作用によく効くのだ。

抗がん剤の副作用は色々あるが、どういう副作用があるかはだいたい決まっている。

抗がん剤をスタートすると、副作用として、食欲が低下する。

体重が落ちる。

ありえんほどしんどい。

しびれや痛みが起こる。

鍼をすると楽になる。

元々がん患者さんだったのではなく、元々は腰痛その他の悩みで何十年も来院していた方がガンになり、

それからも変わらず鍼灸を受け続けて下さり、そのうちに、

「あ、抗がん剤の副作用、鍼行った後楽やわ…」

と、気づき、

がん患者さん同士のネットワークで口コミされ、患者さんの4割ががん患者さんに。

師匠はホームページもなし、宣伝もなし、口コミだけでやってはるので、いつの間にか増えていたのだ。

鍼灸で抗がん剤のしんどさが減るだけがメリットじゃない。

抗がん剤治療を完了するには、途中で白血球などの数値が落ちてもあかんし、体重が減りすぎてもあかん。中止になる。

抗がん剤が楽になるだけでなく、鍼を受けていると数値の悪化も食い止めらる。

師匠は「おうちのあっちこっちにお菓子とか、チョコ置いておくのよ。そして目についたら摘むの」

患者さんに体重を減らさないで頑張り抜こうねと声をかけることも忘れない。

治療中止にならず、最後まで抗がん剤治療をやり遂げるために、気持ちの上でも励まされる。

だから師匠の患者さんたちは鍼を受けに来るのだ。

この本を師匠に貸してくれた患者さんは、師匠のところにがん患者が多いことを知っていて、そういう人に師匠の口から教えてあげて欲しいと思ったのだろう。

わたしも、この動脈塞栓術で、がんの治療で苦しむ人が減ったら、すばらしいと心から思う。

自分ががんになっても、抗がん剤治療を受けるのは怖い。

手術は、たかが盲腸でも後遺症が出ることがある(これは私の実体験。盲腸の後ずっとオペ後に痛みが残った)

治療に選択肢が増えるのは、とても良いことだ。

あんまり選択肢が多すぎてもしんどいが、時代が変わって行ってるのに、選択肢が狭いように感じるところがある。

競争原理が働かないから、進歩が遅いのだろうか…

私が一番強く思うのは、風邪をひいたとき、入院できる病院があれば良いのにということだ。

一人暮らしで、ひどい風邪を引くと、まず困るのが(1)着替えの洗濯、(2)食事。

風邪に治療法なんかない。

安静あるのみ。

三日も入院させてもらったら、さっさと熱を上げて、パッと汗かいて治せる。

着替えも、ごはんも、脱水症状も心配ない。

一番短期で治る方法と思う。

少々高くても、そっちのがありがたいって人は少なくないと思う。

けれど、現状、そういうサービスをしている病院はない・・・(と思う)

国民保険は大事だが、同時に自由診療もできるようにして、多様性も担保できるようになってくれたら、もっとありがたいと思う。

そしたら鍼灸を受ける人も増えるだろうな、って気持ちもありつつ。

(おわり)

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